妊娠中や授乳中のトラムセット服用の注意点

 

妊娠していたり、妊活中だったり、もしくは出産して授乳中だったり…… こんなときは、トラムセットだけでなく、医薬品の使用には敏感になりがちです。もしトラムセットを服用していたり、今後使用を考えているという場合は、妊娠中や授乳中とトラムセットとの関係についても知っておくべきでしょう。

 

まず第一に参考になるのが、トラムセットの添付文書です。

 

妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。[妊娠中の投与に関する安全性は確立していない。トラマドールは胎盤関門を通過し、新生児に痙攣発作、身体的依存及び退薬症候、並びに胎児死亡及び死産が報告されている。また、動物実験で、トラマドールは器官形成、骨化及び出生児の生存に影響を及ぼすことが報告されている。]
妊娠後期の婦人へのアセトアミノフェンの投与により胎児に動脈管収縮を起こすことがある。
アセトアミノフェンは妊娠後期のラットで胎児に軽度の動脈管収縮を起こすことが報告されている。
授乳中の婦人に投与することを避け、やむを得ず投与する場合には、授乳を中止すること。[トラマドールは、乳汁中へ移行することが報告されている。]
参考ページ:トラムセット添付文書

 

妊娠中の記述については↑の通りです。トラムセットは「トラマドール」と「アセトアミノフェン」の配合錠となるので、これら2つのリスクが記述されているわけです。

 

時期 トラマドール アセトアミノフェン

妊娠初期

妊娠中期

妊娠後期

授乳中

 

以上の記述をまとめると、リスクとしては↑の表のとおりになります。

 

まずトラマドールについては、妊娠中~授乳中を通じてずっとリスクがあります。また、アセトアミノフェンについては妊娠後期についてリスクが懸念されています。繰り返しになりますが、トラムセットはトラマドールとアセトアミノフェンの配合錠なので、トラムセットには妊娠中~授乳中の間ずっと、リスクが付きまとうということになります。

 

添付文書には「妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること」とあるので、トラムセットによって神経痛などの痛みにかなり効果があり、トラムセットなしでは生活が難しいという場合は服用を続けることもありますが、それもリスクを覚悟したうえでということになります。

 

FDAの評価を見てみる

 

添付文書だけではわからないという場合は、他の評価を見てみるのも手です。アメリカのFDA(日本の厚生労働省のような組織)では、FDA薬剤胎児危険度分類基準という名前で、医薬品ごとに、妊娠中~授乳中の胎児へのリスクを評価しています。

 

FDA薬剤胎児危険度分類基準

カテゴリー 危険性 妊娠中・授乳中の服用
A 危険性ナシ OK
B 多分危険性ナシ 多分OK
C 危険性があるかも 場合によってはOK
D 危険性アリ やむを得ない場合以外NG
X 禁忌 絶対NG

 

この「FDA薬剤胎児危険度分類基準」については、「A、B、C、D、X」の5段階評価となっており、

 

トラマドール:C
アセトアミノフェン:B

 

の評価を得ています。つまり、アセトアミノフェンについては比較的安全だが、トラマドールについてはややリスクがあるという判断になります。

 

とはいえ、「B」だの「C」だの言われてもイマイチわからないという女性もいるはずなので、その他の医薬品と比較してみましょう。

 

カテゴリーA 葉酸
カテゴリーB トランサミン、カフェイン、アセトアミノフェン、アモキシシリン(抗生物質)など
カテゴリーC トラマドール、ロキソニン(解熱鎮痛剤)クラリス(抗生物質)、デパス(抗不安薬)、サインバルタ(抗うつ薬)など
カテゴリーD アルコール(お酒)、ニコチン(タバコ)、ボルタレン(解熱鎮痛剤)、ミノマイシン(抗生物質)、ワイパックス(抗不安薬)、パキシル(抗うつ薬)
カテゴリーX サリドマイド、ハルシオン、ワーファリン

 

他の医薬品との比較は↑の表のとおりです。「妊婦が積極的に摂るべき」とされている葉酸が「A」なのは納得の結果ですが、アセトアミノフェンもリスクとしてはカフェインと同程度となり、「摂りすぎなければOK」という部類ということがわかります。

 

そしてトラマドールについては、「デパス」や「サインバルタ」など、妊娠中に服用するのにはちょっと抵抗のある医薬品と同程度のリスクとなっています。また、意外なことに、ロキソニンやクラリスなどの広く普及している医薬品も「C」に入っているので、市販の医薬品もある程度の注意が必要ということがわかると思います。

 

なお、カテゴリーDには妊娠中にはやめるべきとされている「タバコ(ニコチン)」「お酒(アルコール)」が入っています。そしてカテゴリーX(禁忌)には、サリドマイドやワーファリンなど、妊婦は絶対NGな医薬品がラインナップされています。

 

これらをまとめると、トラムセットについては「タバコやお酒ほどではないが、リスクはあるので、できれば避けたい」という判断ができると思います。

 

不安ならアセトアミノフェンに絞る

 

トラムセットの中で、アセトアミノフェンに関しては「カテゴリーB」となります。これはカフェイン程度のリスクということなので、妊娠中でもある程度安心して服用可能です。実際、「妊娠中のロキソニン服用はリスクがあるので、アセトアミノフェンに変えましょう」という話も出るほどです。

 

なので、妊活していたり、妊娠が判明したなどの場合は、アセトアミノフェンだけの使用に切り替えるのも手でしょう。ただし、すでに紹介したようにアセトアミノフェンは妊娠後期にはある程度のリスクがあるので、使用は妊娠初期~中期にとどめたほうが無難です。

 

とはいえ、妊娠中は医薬品を服用しない方がいいとは行っても、1年近い期間を「ただひたすら痛みに耐える」というのはかなりつらいことでもあります。トラムセットは効果がリスクを上回る場合は服用OKとされているので、しっかり医師と相談して、可能な範囲で服用を模索することも必要です。また、ペインクリニックで神経ブロック治療を受けるなどの選択肢もあるので、ただ我慢するのではなくできるだけ医師の診察を受ける方がよいでしょう。

 

また、「トラムセット服用中に、妊娠がわかった」ということもあるでしょう。この場合、妊娠2~12週の妊娠初期をトラムセットを服用しながら過ごしたことになります。しかし、このケースでも不安に感じすぎるのはやめたほうがいいでしょう。もし妊娠初期はトラムセットを服用してしまっていたとしても、胎児に影響が出る可能性は低くなっています。不安を覚えてストレスを抱える方がずっと悪影響なので、気に病みすぎないことが大切です。気になるなら、医師の診察をうけつつ対処していきましょう。

 

授乳中の対処法はかんたん

 

出産後も、「授乳」という形で赤ちゃんとのかかわりは続きます。しかし、トラムセットを服用していると、母乳を通じて成分が赤ちゃんにわたってしまいます。

 

ただ、妊娠中に比べれば、授乳中のリスクはずっと低いです。というのも、「ミルク育児」に変更することで、トラムセットと赤ちゃんを完全に切り離すことができるからです。現在はさまざまな事情でミルク育児を選択しているママもたくさんいるので、授乳中にトラムセットの服用が必要ならミルク育児を選択するのがよいでしょう。

 

ただし、初めての母乳「初乳」だけは、できれば飲ませたほうがいいです。というのも、初乳には免疫グロブリンAという免疫物質が入っており、ママの最低限の免疫を赤ちゃんに渡す役割をもっているからです。

 

普通に初乳を飲ませても、1回くらいの授乳なら大きな問題になることは少ないです。しかし、万全を喫するなら初乳を上げる前の1~2日程度、トラムセットの服用を控えてみましょう。トラムセットは服用後24時間経過すれば血中濃度はほぼなくなるので、かなりリスクを減らした状態で授乳が可能です。

 

その後は完全ミルク育児に切り替えることで、授乳中のトラムセットのリスクは最低限に抑えることができます。